つばさホールディングス株式会社の設立まもなく、ひとり広報として入社した北口彩子さんは、武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒。インハウスデザイナーとして入社し、現在はWEB運用や広報戦略に携わり広報宣伝グループのマネージャーを担っています。
今年6月、「物流の2024年問題をどう解決する?」というテーマで講義を行いました。
登壇したのは、造形学部基礎デザイン学科2年生対象の「デザイン論II」。同学科の卒業生を中心に毎週異なる講師が、自身のキャリア紹介とデザイン領域の向かう方向について語っています。
講義ではワールドカフェの手法を用いて、学生たちの柔軟なアイディアを集めました。その数192個。
突飛なものから既に業界で行なっている施策につながるものまでありました。今回は講義実施の経緯と学生のアイディアを紹介します。
きっかけは美大生の発信力への期待
──今回の機会は、大学側から講義依頼が来たのでしょうか?
いえ、私は有名なクリエイターでも、誰もが知っている企業で活躍している訳でもないので大学からの依頼が来たわけではありません(笑)。
ちょうど一年前の6月、「2024年問題」と言われる物流業界の働き方改革施行まで1年をきった時期。「当たり前にモノが届かない社会」が近い将来訪れるかもしれない、ということを私の周りの家族や知人もそうですし、一般的にも知られていないと感じていました。
そこで母校のHPの問い合わせ窓口からメールを送りました。10、20代向けのファッション雑誌数社にも同様に、記事を書かせてくれないかとメールを送っています。物流関係者とは全く違う切り口の、若い層へ向けて情報発信をしたかったんです。
【2024年問題をデザイン課題に】というタイトルで3度目に送ったメールに、大学の広報の方から返信がありました。広く知らしめるという意味で課外講座のご案内をいただけたんです。
──どうして美大生の制作につなげたいと思ったんですか?
美大生のデザイン思考や発信力は、社会を動かすきっかけになると期待したからです。
社会から期待されるデザイン思考力
何度か大学に行った際にキャリアセンターの方ともお話しすることができました。以前はクリエイティブ業界の求人ばかりだったのが、一般企業からの求人も増えているそうです。特許庁が「デザイン経営」を推進していたり、「デザイン思考」という言葉がトレンドであるように、デザイン制作の過程で必要な思考力がビジネスや経営にも求められているのを感じています。
美大生の特性として、ひらめいたら実行する、良いと思ったら人に伝える、作品制作に活かすといった熱意と表現力、挑戦する精神があると思います。
──北口さんの学生時代でもそんな経験がありましたか?
在学中に沖縄戦から50年経ち、NHKが記念番組を放送していました。加藤登紀子さんが歌う「さとうきび畑の歌」をテーマにした番組で、戦争の悲劇と平和のメッセージを伝える内容でした。
私はこの番組をたくさんの人に知ってもらいたくて、自主講座を主催したんです。NHKに使用許可をとり、「沖縄戦を知っていますか?」というキャッチコピーで自作のチラシを全学部の掲示板に貼りました。番組を観た後に「さとうきび畑の歌」を生演奏したんですが、私はギターが弾けないので知人に無理にお願いしてデュオでライブをしました。
講座をきっかけに出会った友達の数名は、卒業後も仕事を一緒にする仲間にもなりました。
これは学内の事例ですが、学生が地域や企業と連携して活躍する事例は増えています。熱中する色々なテーマの一つとして物流業界が抱える課題があることも、知っていてもらいたいと思いました。
ワールドカフェで集まった192のアイディア
「物流の2024年問題をどう解決する?」と書いた模造紙を使って、リサーチ情報やアイディアをどんどん書き出した後、新しい模造紙に清書をして10チームがプレゼンテーションを行いました。アイディアを大きく6項目に分けグラフにしたのがこちらです。
●外的要素…免許制度の改善・配達経路の改善・モーダルシフトなど
●福利厚生・環境…免許取得支援・リラク&ジム併設・コンビニ割引・サブスク提供など
●イメージアップ…インフルエンサー育成&発信・アニメやドラマ化・ブランディングなど
●人材確保…多様な属性の雇用・リファラル採用・ツーリストの雇用など
●トラックや備品の改善…ドライバーの負担軽減・デザイン性向上・環境配慮・自動運転など
●新規事業の創出…×広告・×ツーリスト・×AI・×お客様など
奇抜なものから既に実施しているものまである中で、「働きやすさ」と「ドライバーのイメージアップ」に関連するアイディアが7割強。活発に意見が交わされました。
インフラについての教育も高まってほしい
──講義後の学生の反応はどうでしたか?
後日学生からいただいた感想は、広報として携わる私のモチベーションを高めてくれました。
全員が関心を高めてくれたし、卒業後のキャリアの一例としても参考になったようです。
「スーパーでバイトをしており、物が届かないと仕事にならないので物流の大切さは身に染みています。しかし物流問題があることは知らなかった。身近な事でも知らないこと、分からないことがあり、それを伝える事こそがデザインの仕事なのかなと思いました」
「直接関係ないと思っていたが、自分でも解決に近づけるアイディアを出すことができると気づいた。これからは積極的に社会の問題に目を向けてみようと思う」
「2030年には30%の品物が届かなくなる予想があると聞き、危機感を感じました。運送業界だけの話ではなく、消費者も一丸となって考えるべき社会問題だと思いました」
物流やインフラは現代社会の基盤を支える重要な要素です。当社グループでは冷蔵冷凍食品と精密機器の輸送を担っていますが、冷たい食品を品質を落とさずエンドユーザーに届ける日本の輸送技術は、世界にも誇れるものだと思います。
情報が届けば、今物流に関わっていない若い世代も目を向けて、過去にとらわれない形で発想してくれます。
学校教育の過程でも、物流は私たちの生活に欠かすことのできないライフラインの一つであることを子供たちに知ってもらいたい。経済活動を支える物流に、次の世代が一人でも多く関わってくれることを願っています。
トラックドライバー採用強化中。高卒から、未経験者育成に力を入れています
https://www.recruit.tsubasa-logistics.co.jp/
つばさホールディングス
https://tsubasa-holdings.co.jp/
武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科
https://www.musabi.ac.jp/course/undergraduate/scd/