地域の大手スーパーへの食品輸送と、精密機器輸送を担うつばさロジスティクス株式会社(以下、つばさロジスティクス)。2019年から始まった新型コロナウイルスの影響により、ドライバー不足が続いています。外食を控えて家で食事をする機会が増えていることが背景にあります。家庭の食卓を支えるスーパー店員や食品を運ぶトラックドライバーは「エッセンシャルワーカー」と呼ばれています。
エッセンシャルワーカーとは、私たちの日常生活に必要不可欠な職業に就いている人のことで、医療・福祉従事者や役所職員、運転士、ゴミ収集員も同様に呼ばれます(トラックドライバー不足に関しては、高齢化や運転免許範囲の変更も原因となって、運送業界全体の課題になっています)。

2019年10月、奥寺美桜さんはつばさロジスティクスのトラックドライバーとして、21歳の時に入社しました。オートマ免許から合宿で大型免許を取得。現在は4tトラックに乗って1日2便、食品をセンターから店舗へ運びます。まったく異なる業種からの転職には、同じ職場でドライバー兼管理者として働くお父さんの存在が大きいようです。
お父さんの奥寺俊行さんは、2018年に関連会社にトラックドライバーとして入社。2020年から配車など管理の仕事を経験し、現在は係長としてドライバー目線の働きやすい職場づくりを担っています。
お父さんの会社に入るきっかけ

美:もともと車の運転は好きでした。でも大きな理由は、お父さんを助けたいという気持ちです。ドライバーや管理の担い手が足りなくて、いつも忙しそうにしているのを見ていて「お父さんの会社に入る」と決めました。
奥:少しでも助けになりたいという気持ちは本当に嬉しかったです。しかし、まだまだ男性が多い職場なので心配もありました。ただ本気で自分の職業にするなら「先を考えると大型免許を取った方が仕事の幅も広がるし会社も助かるよ」とアドバイスをしました。娘が持っていた普通免許はオートマ限定で乗れるのが2tまでだったので。
──普通車から大型車を運転するのは大変でしたか? 合宿では同世代も参加していましたか。
美:京都の合宿免許で2週間ほどかけて大型免許を取得しました。同世代は一人もいなくて、20代後半から30代くらいかな。普通免許を持っているので実技試験だけだったけど大変でした。オートマしか運転したことがないというところでまず大変なのに、はじめてのマニュアル操作を大型車両を使って運転するのでとても怖かったです。
安全が最優先のドライバー育成
奥:つばさロジスティクスでは未経験でもトラックドライバーの採用をしています。2tから10tトラックで食品を運びますが、経験の浅い人にいきなり公道で走らせることはしません。約1ケ月は先輩ドライバーに同行して教えてもらい、会社の敷地やセンターからトラックの運転に慣れてもらいます。荷物の運び方や経由地でのマナー指導は、配送エリアごとに決めた班長にまかせて、私は主に運転について厳しく指導します。一人になった時に事故をしてほしくないんです、事故を起こした相手にも自分にとっても一生を左右することだから。勤務時間の7割以上が運転する時間なので、交差点ひとつ入るにしても毎回注意してほしい。とにかく安全が最優先です。私も公道でトラックを運転する時は今でも「怖さ」を意識してハンドルを握ります。
美:入社初日はお父さんが教えてくれたけど確かに厳しかった。2日目からは班長の佐藤さんが分かりやすく教えてくれて、一か月半経った頃から一人で運転できるようになりました。今日は立川から川崎までが1便立川に戻って2便は横浜まででした。毎日センターを経由しながら2か所の店舗に食品を届けています。
女性にとってのドライバー職

──トラックドライバーは重労働というイメージは昔より改善されていると聞きますが、実際女性が働く職業としてどうでしょうか?
美:とはいえ、荷物は重いですよ(笑)。実は入る前は楽そうな仕事だと思っていました。でも男性とは体格も違うし、テナー※はあるけど腕だけでは動かせなくて、腰や脚を使います。どうやって皆は動かしているんだろう?と思っていたけど、今は片手でテナーを2個運べるようになりました。職場は居にくい雰囲気はなく、働きやすい環境です。会社の人や店舗先、他の運送会社の人も気遣って声をかけてくれたり、手伝ってくれたりするのは女性の特権かもしれません。特に会社ではお父さんとお母さんがいっぱいいる感じです(笑)。
※テナー…貨物の保管や輸送に使用される折り畳めるスチールパレット
奥:昔と違い、手で荷物を積んだり下ろすという作業はほとんどありません。車への積み下ろしはゲートを使ったり、テナーも動き始めの時の操作に慣れるまでコツがいりますが、手で運ぶ一昔前よりも随分やりやすくなっていると思います。
──きっかけはお父さんを助ける気持ちからでしたが、トラックドライバーは長く続けていけそうですか?
美:はい。ドライバーの前は美容師をしていたんですが、お客様やスタッフといつも一緒にいる仕事が辛くなってしまって。ドライバーは早朝出勤が苦手だけど、一人の時間が多い仕事なので、自分のペースに合っていると思っています。今は一人で行けるルートが限られているけど、1年経ったら色々なところにも行けると思います。
日々のコミュニケーションを配車作りに活かす
──頼もしいですね。ドライバーが運転するルートを決める配車表作りは、奥寺さんが担当されていますね。配車表作りで心がけていることはありますか?

奥:効率よく配送ルートを設定することももちろんですが、ドライバーの要望は可能な限り反映するようにしています。ドライバーによって毎日決まったルートが良い人と、日ごとに違うルートが良い人がいます。また、稼ぎたい人もいれば休日はしっかり取りたい人もいる。本当に一人ひとりの生活環境で要望が違います。私の勤める拠点には約100人のドライバーが働いているので、コミュニケーションを取りながら名前や要望を把握しておくように心がけています。私もトラックドライバーを経験しているのでよく分かるのですが、会社からの指示ばかりだと嫌になりますよね。たとえば子供の行事参加で休みを取りたい、という時に会社に言えるような雰囲気があることが大事です。仕事量で叶えられない時もありますが、なるだけ休みは聞いてあげたいという気持ちで配車をしています。
──今、課題になっていることや、取り組んでいることはありますか?
奥:2019年からの新型コロナウイルスの影響が続いていて、荷主様から依頼いただくコース数に対してドライバーが伴っていないのが課題のひとつです。若手や女性の雇用と共に即戦力となる経験者の雇用も力を入れています。取り組みとしては、食品を運ぶ会社として身だしなみや車両の清潔さはこだわっています。自分がスーパーのお客様だとしたら、汚いトラックや運転手が運んだ食品を買いたいとは思わない。ユニフォームのデザインを一新したり、ドライバーの洗車回数を掲示することで運転する人の美意識を高める取り組みをしています。
幅広い世代で運送業を支える
──同じ職場で、親子で働くことに抵抗はありませんか?

美:まったくないです。むしろ安心します。分からないことがあれば何でも聞けるし、家族と過ごすことが好きなので職場も家も一緒なのは嬉しいです。車が家に一台しかないので、送り迎えを兄弟がしてくれることもあって家族で協力し合っています。
奥:心配してこの業界に入ってくれたので抵抗はありません。心配はしますけどね。社内外で周りの方にサポートしてもらっているようなので、心配も以前ほどではなくなりました。つばさロジスティクスは、年齢層が高い運送業界の中では女性や若いドライバーも多いです。女性でもできるというところを娘が見せてくれるのは会社としてもありがたいですね。熟練ドライバーの協力も得て運送業界を盛り上げています。
──かっこいいお父さん、という気持ちはそのままに同じドライバーとして働き始めた美桜さん。ドライバーと管理者の育成にあたる俊行さん。運送業はまだまだ人の力が求められる仕事です。現在つばさロジスティクスのドライバー求人では、経験者に加え未経験者の育成にも力を入れています。全くの異業種から転職を考えている方も、まずはご相談ください!
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つばさロジスティクス
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