つばさホールディングス株式会社は、物流の社会課題の解決のために日々社会に価値を生み出しています。弊社の中期経営計画で掲げている3PL事業を理解するためには、サプライチェーンマネジメント(SCM)の理解が不可欠です。そのため今回の物流用語解説ではサプライチェーンマネジメント(SCM)について解説していきます。
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは

日本産業規格(JIS)では下記のように定義されています。
資材供給から生産,流通,販売に至る物又はサービスの供給連鎖をネットワークで結び,販売情報,需要情報などを部門間又は企業間でリアルタイムに共有することによって,経営業務全体のスピード及び効率を高めながら顧客満足を実現する経営コンセプト。
言い換えると、サプライチェーン(調達・製造・流通・販売・消費)における全体の効率化・最適化を実現するための経営管理手法のことを指します。原材料のサプライヤーから最終的な消費者に至るまでのサプライチェーンに関わる全てのステークホルダーを巻き込み、その流れを最適化します。
またSCMの目的は売上高利益率(ROS)を高め、企業の利益を最大化することです。
SCMが注目される背景、歴史
1980年代前半にアメリカでSCMという概念が誕生し、2000年代初頭にITを企業経営に取り入れる動きと共に本格化しました。昨今さらにSCMに注目が集まっている要因は大きく2つです。
- グローバル化とECの普及
ビジネスのグローバル化とECの普及により、越境ECと呼ばれるグローバルなEC取引が加速しました。言語や文化、商慣習の異なる企業とのやりとりを円滑に進めるために、各プロセスの情報を一元管理し全体の最適化を図る必要性が増加しています。
- 災害等のリスクヘッジ
2011年の東日本大震災、2019年のパンデミックの時、サプライチェーンの脆弱性が浮き彫りとなりました。一部の供給先の途絶が他の地域や業界に波及するリスクが明確化しており、リスクヘッジのため調達先の分散化の必要性が増加しています。
サプライチェーンを構成する主要なプロセス

①購買・調達
製品の製造に必要な原材料を調達するプロセスで、サプライヤーの選定、価格交渉、納期管理、品質管理などが含まれます。またサプライヤーとの強固な関係構築やリスク管理も重要な要素です。
②生産・製造
調達した原材料や部品を組み立て、製品に仕上げるプロセスです。生産計画の立案、工程管理、品質管理などが含まれ、需要予測に基づいた柔軟な生産体制の構築が求められます。また生産工程の可視化や自動化、品質の一貫性の確保も重要なポイントとなります。
③在庫・物流管理
製品の保管、梱包、輸送、配送など物流全般を最適化するプロセスです。製品を適切なタイミングで顧客に届けるための重要な役割を担い、近年ではIT技術の活用によりリアルタイムでの在庫管理や配送状況の把握が可能となり、更なる効率化が進められています。
④在庫リスク管理
製品や原材料を適切な数量かつ適切なタイミングで確保・調整するプロセスです。リアルタイムの在庫状況・需要予測・販売計画と連動し、サプライチェーン全体の効率化が促進されることにより、過剰在庫や欠品を防ぎます。
⑤販売・顧客サービス
製品やサービスを顧客に提供し、満足度を高めるプロセスです。需要予測や販売計画と連動し、適切な在庫管理や迅速な配送を実現します。また顧客からのフィードバックを収集・分析し、製品やサービスの改善に生かすことにより、継続的な関係構築が可能となります。
⑥リスクマネジメント
サプライチェーン全体に潜在するリスクを特定・評価し適切な対策を講じるプロセスです。自然災害、パンデミック、地政学的リスクなどさまざまな要因が影響を及ぼす可能性があるため、サプライヤーの多原価、在庫の適正化、代替輸送手段の確保など、柔軟な対応策を講じることでリスクを最小限に抑えます。
⑦配送・流通
製品を顧客に届けるための最終段階です。効率的な出荷計画や配送ルートの最適化により、リードタイムの短縮やコスト削減を実現します。また配送状況のリアルタイム追跡や柔軟な配送オプションの提供により、顧客満足度の向上を狙います。
SCMのメリット・デメリット
<メリット>
①コスト削減
サプライヤーの見直しや価格交渉を成功させることで、原材料や部品の調達コストを削減することができます。またサプライチェーン全体が効率化されると、製造コスト、物流コスト、人件費などさまざまな経営コストを削減できるため、製品原価を大幅に抑えることができます。
②リードタイム短縮と生産性向上
各工程間の連携が強化され、情報が共有されることで作業開始から終了までのリードタイムが短縮されます。これにより企業全体の生産性が飛躍的に向上し、限られた時間でより多くの価値を創出することができるようになります。
③品質管理体制の強化と品質向上
情報の可視化が進むことで、各工程における品質管理体制が強化されます。例えば、不良品の発見や原因分析を迅速に行えるようになり、その結果、製品品質の向上をもたらします。また、サプライヤーとの連携を強化することで、品質基準の統一や改善活動が促進され、全体的な品質レベルの向上が期待されます。
④顧客満足度向上
在庫の最適化により、顧客が求める商品を確実に提供できるようになり、欠品による機会損失を防ぐことができます。また、サプライチェーン全体の効率化により供給スピードが向上するため、迅速かつ正確な納品が可能となり顧客サービスが向上します。
⑤アジリティとレジリエンスの向上
アジリティの向上:消費者ニーズや市場トレンドの急激な変化に対し、リアルタイムデータを活用して迅速に生産計画や物流ルートを見直すことができます 。これにより、市場への即応性が高まります。
レジリエンスの向上:自然災害、感染症、地政学リスクといった予期せぬ事態によるサプライチェーンの途絶に対し、調達先の分散化や代替サプライヤーの確保、適切な安全在庫の維持といった対策を講じることで、事業継続性を高めることが可能になります 。
<デメリット>
①SCM導入によるコスト
SCMの導入はシステム選定だけでなく、社内外のステークホルダーを巻き込んだ大規模な組織改革を伴います。特にSCMの推進役や専門的なノウハウが社内に不足している場合、業務が複雑化し導入までの工数や時間が大幅にかかるケースがあります
②投資対効果が不透明
SCMによる在庫削減やリードタイム短縮といったコスト削減効果は比較的理解しやすいものの、どれが最終的にどの程度売上や利益の増加に直結したかを明確に示すことが難しい場合があります。このため、経営層の意思決定や追加投資の判断が曖昧になりやすいという問題が生じます。
③急激な需要変動に対応不可
従来型のSCMは過去の実績データに基づいた長期的な計画を重視する傾向があるため、SNSなどの突発的なトレンドや急激な需要変動に柔軟に対応できないという弱点があります。結果として品切れや在庫過剰になる可能性があります。
SCMシステムとは
SCMとはサプライチェーンにおける全体の効率化・最適化を実現するための経営管理手法でありますが、この経営手法を実践し実現するための基盤となる情報システムをSCMシステムと呼びます。多くの企業がSCMシステムを導入し、サプライチェーン全体の効率化を達成しています。昨今のSCMを理解するためにはSCMシステムについて知る必要があります。
SCMシステムの主要機能
SCMシステムはサプライチェーン全体を一元管理するシステムですが、主要な機能として3つあります。
- 「予測・計画」
将来の需要を予測し、予測に基づいて調達計画・製造計画を設定します。またその計画をもとにリードタイムの管理も行います。
- 「実行」
予測や計画に基づいて実際のサプライチェーン活動を管理・実行します。具体的には、受注・生産・物流・在庫・顧客の管理を行います。
- 「評価・モニタリング」
サプライチェーンのパフォーマンスを定量的に評価し、定期的にモニタリングを実行します。
効果的なSCMシステム導入に向けた5つのステップ

ではどのようにシステムを選定し、導入していけば良いのでしょうか。
SCMシステムの導入までは、5つのステップで構成されています。
- 課題特定及び改善目標設定
自社のサプライチェーンを構成する要素を整理し、各プロセスや全体に潜む課題を検出します。その上で「コストを10%削減する」や「納期を3日短縮する」など具体的な改善目標を設定します。
- デジタル化の可否検討
デジタル化はあくまで目標達成のための一つの手段であり、全プロセスをデジタル化する必要はないため、費用対効果を十分に検討する必要があります。
- システムの選定
課題と目標に応じて、SCMシステムやERPシステムなど、最適なシステムを選定します。サプライチェーン全体の最適化が目的であればSCMシステムが有効だが、企業全体の資源を一元管理したい場合はERPシステムが適しているなど、目的によって手段は異なります。
- 従業員に対する教育
新しいシステムやプロセスを現場に定着させるために従業員への説明とトレーニングを行います。
- システム運用(監視と改善)
システムの運用開始後も、サプライチェーンのパフォーマンスを定期的に監視し、課題や問題点の早期検出、対策の実施を繰り返します。SCMは一度導入すれば終わりではなく、市場や環境の変化に応じて継続的に改善していくことが重要です。
SCM実践事例
- トヨタ自動車「トヨタ生産方式」
トヨタ自動車の「トヨタ生産方式」は「ニンベンのついた自働化」と「ジャスト・イン・タイム」を二つの柱とする、SCMシステムに依存しないSCMの代表例として広く知られています。必要な部品を必要な時に、必要な量だけ供給することで、無駄を徹底的に排除するプル型生産の思想に基づいています。
しかし、そのSCMの真髄は、国内におけるこのプル型戦略だけでなく、グローバル市場の特性に合わせて「プッシュ型」の生産を巧妙に融合させている点にあります 。例えば、米国や中国では、顧客がその場で車を持ち帰る「店頭販売」が主流であるため、ディーラーは豊富な在庫を持つ必要があり、この需要に応えるため、「見込生産」というプッシュ型の戦略を採用しています 。
トヨタのSCMの強みは、このプッシュとプルのハイブリッド戦略を、日本本社で策定される「月度生産計画(Getsudo)」を要として、世界中の工場を動かす一貫した仕組みに統合している点にあります。
- Amazon「FBA」
アマゾンはSCMを「モノの流れ」だけでなく「データの流れ」をマネジメントする戦略として捉えています。同社の「予測発送システム」は、顧客が注文する前に商品を最寄りのフルフィルメントセンターに発送するもので、これにより当日発送といった圧倒的なスピードを実現しています。
このシステムはAIが膨大な顧客データや季節変動データを解析し、需要を高い精度で予測することによって実現しており、AIは顧客が将来何を購入するかを予測しサプライチェーン全体を動かしています。またFBA(Fulfilment by Amazon)に代表されるように、数百に及ぶフルフィルメントセンターのネットワークとAIによって、物理とデジタルの融合を実現しています。
まとめ
サプライチェーンマネジメント(SCM)は、単なる業務効率化の手法ではなく、企業の競争優位性を確立するための戦略的経営手法として進化しています。これは、原材料の調達から製造、流通、販売、そして最終消費者への届けるまでの一連のプロセスを、個別の効率性を追求する「部分最適」ではなく、サプライチェーン全体の視点から統合・管理する「全体最適」を目指すものであります。
つばさホールディングス株式会社が中期経営計画で掲げる3PL事業の実現のためには、経営層・新入社員関係無く、全ての従業員が物流に関する知識を日々深めていかなければなりません。そのため「物流用語解説」を何度も読み直し、物流知識のインプットに努めていきましょう!
