運送業界の大きな課題のひとつ「事故」。令和3年の全日本トラック協会の発表では、令和2年中に全国で発生した交通事故(物損事故を除く)件数は 309,178 件。前年に比べて72,059 件減っているものの、業界全体の無事故への壁は大きく立ちはだかります。関東甲信越を中心に組合員14社・賛助会員8社の合計22社からなるつばさトラック事業協同組合が取り組む、事故撲滅への活動を紹介します。
組合員サポートの限界に挑戦
トラック運送関連会社で作られるつばさトラック事業協同組合では、適正運賃の収受や安全安心の確保、法令遵守、労働力の確保など、トラック運送事業が持続的に発展できる仕組みづくりを行っています。
中小企業者が互いに協力し、助け合う精神(相互扶助の精神)に基づいて協同で事業を行うことを目的に、基本事業と組合独自のオリジナルサービスを提供しています。
基本事業

オリジナルサービス

声帯からメンタルチェック・事故防止へ
つばさトラック事業協同組合では、基本事業に加えオリジナルサービスにも力を入れています。声帯から精神状態を分析して事前に事故防止へとつなげる「つばさメンタル」は、その中でもメディアに注目されているサービスです。
つばさメンタルとは、3つのワードを発すると「声帯」の状態でストレス状況が分かる仕組み。2021年6月、組合員のドライバー14名に一定期間使用したところ、デジタコ※とつばさメンタルの計測結果に因果関係が認められました。「事故防止につながる」と実際に導入した企業は「心の活量値※に異常がある時は、ドライバーに注意喚起をして危険予知に活かしています」と語りました。


(表は将来的な解析イメージ)
※デジタコ…デジタルタコグラフの略称。自動車運転時の速度・走行時間・走行距離などの情報を記録するデジタル式の運行記録計のことで、運送会社のトラックに標準装備され運転技術の見える化をしている。
※心の活量値…声から計測する短期的な心の状態を2週間単位で分析する値。精神状態が安定している時は一定の値を保っている。基準値を下回る時は運転に注意が必要だ。
科学的数値から事故防止につなげられるメンタルチェックに注目した同組合事務局の藤木義紀さんに、開発のプロセスをうかがいました。
「この仕組みの元となる『MIMOSYS』というアプリを、過去組合主催のセミナー講師を依頼した会社から紹介されたのが、最初のきっかけでした。「声」から病気やストレス数値が見えるのが面白いのと、スマホアプリでの操作がとても簡単だったので興味をもちました。
開発したPST株式会社から、大手企業や自衛隊でも導入実績があり、東京大学が基礎技術の開発をしていると聞き、期待が高まりました。何よりプライベートで悩みがあったり、人事異動や残業が重なっている時に、本人が自覚していないストレス状態を発見できると分かり、当組合の運行システムと紐づけて予測アラートが出る仕組みを独自で開発しました。管理者がドライバーと対面でのコミュニケーションを深めると共にメンタルチェックを活用することで、事故予防の精度が高まります。」
実証実験では有効性が認められ東京大学や日本産業衛生学会で発表。その後『日経トップリーダー』や『物流ウィークリー』、大同生命提供のBSテレビ東京『アルバレスの空』など各メディアで取り上げられています。
BSテレビ東京『アルバレスの空』アーカイブ
https://youtu.be/8nnlXDF40tQ

運送業界の未来へ

組合員であるつばさロジスティクス(東京都立川市)では、一拠点全ドライバー187名が「つばさメンタル」を始めています。つばさトラック事業協同組合では横の連携を取りながら、相互扶助の精神で組合員のメリットになる共同事業を行い、つばさメンタルはその一つとして物流業界全体に広げていきたいと考えています。
つばさトラック事業協同組合
https://tsubasa-truck.or.jp/