昭島市にある昭和20年創業のカーライフサービス多摩車両(以下、多摩車両/現:つばさモビリティ)では今、自動車整備士の若手育成に力を入れています。
ハイブリッド化、EV化に舵をとる車業界ですが、若者の車離れが従来の整備需要をカバーできていない状況です。2021年の整備士の平均年齢は45.7歳。10代は全体の4%と深刻です。求職者1人あたり何件の求人があるかを示す、有効求人倍率は4.58倍で、全職種平均の1.13倍を大きく上回ります。(2021年厚生労働省調べ)
そこで多摩車両では2017年から、採用対象を整備士学校卒業者など整備士資格保有者だけでなく、人間力に価値をおき、やる気があれば未経験から育成する方針に転換してきました。2023年6月時点では3名の整備士候補が働いています。
20歳の武田さんSTORY
「工具を使う仕事をやりたい」と、自宅から近い多摩車両の採用募集を見つけて2022年5月に入社した時、武田さんは19歳でした。高校生の時、バイクを持っている友達が工具を使って愛車をいじるのを手伝っていました。自分の手が加わることで変わっていく過程のわくわくを、仕事でも感じたいと思ったそうです。
入社当初は先輩に教わりながら洗車を担当しました。2人で一日平均10台の乗用車を洗う日々が始まります。雑用と思われがちな洗車ですが、車をピカピカにすることでお客様から直接「ありがとう」と言っていただける、心の報酬をもらえる良い機会になります。
入社から3ヶ月以内にお客様アンケートで反応をいただくことを成長の指標の一つにしている多摩車両ですが、武田さんは3週間で洗車の指名をもらうまでに成長しました。
社内で目標にしている人は?と武田さんに尋ねると「近藤さんみたいになりたい」と答えました。先輩整備士の近藤さんからは「入社したばかりで今はまだ一人前とは認めていない。気持ちだけでなく勉強することが大事」と厳しい一言も。整備士は実践しながらこつこつと技術を高めていく、職人のような職業です。
先輩からの指示でしか動けなかった入社時に比べて自分の頭で考えて行動できるようになり、整備の仕事も教わりながら自分の世界を広げていきました。武田さんは今、実務一年が過ぎ3級整備士試験に向けて勉強の日々をおくっています。
成長のロードマップは3年計画
整備部で未経験の社員を初めて採用した背景を、片桐取締役は次のように語りました。
自動車整備士という職業を武田さんのような若い世代に継承していくことが大切だと思っています。武田さんは面接の時から、18歳とは思えない落ち着いた雰囲気と真面目さがあり挑戦したいという気持ちが伝わってきました。本人から「資格はなく普通科の学校だけど大丈夫ですか?」と聞かれましたが、同じ志をもてる人を応援して会社に貢献してもらいたい、と採用を決めました。
多摩車両は理念経営を軸に成長してきた会社です。トップダウンでなく社員一人ひとりが会社の成長や地域への貢献について考え実践を重ねてきました。地域社会に貢献する人財を、やる気のある若い世代から育てたいと考えています。技術は後からでもついてきます。
自動車整備士になるには、専門学校や大学で資格取得する場合と、武田さんのように実務を一年経験して資格試験を受ける場合があります。2級整備士や自動車検査員資格を取ることで仕事の幅はより広がります。未経験の社員の人間力とプロスキルを育てるプランは、多摩車両では3年計画で進めます。東京都自動車整備技能競技大会の出場も目標の一つにしてもらいたいですね。
仕事に取り組む姿勢はトップクラスだという武田さんの成長に、社員全員が寄り添っています。
カーライフサービス多摩車両(現:つばさモビリティ)
https://www.clstama.co.jp/